ステイトメント

「それぞれの場所、ひとつの空」

 災害の痕跡、風化の爪痕は、予想以上に重く圧し掛かる。泣いたり笑ったり腹を空かしたり、この大地の上で繰り返している事実を、当たり前の事として、私は日頃、忘れている。自然は恐ろしい側面より、美しい光を多く見せてくれるから、日々恐怖せず、地に足を密着させて歩いて行ける。自然というものは本当に得体が知れない。例え音楽や美術が人間のことを語っても、その背後には必ず自然という器が影響し共鳴している。屋外で絵筆と紙に見えている事を描きとめようとする端々で、雲間に光が射すように、時折そういう現実を知る。

 風景画は、そこに在る、存在する自然、自然現象、人工物も含む自然の状態のすべてを観察し、それらを平面に置き換え、色や線・形を配置し、そこから風景を連想させることで、初めて成立するトリッキーなものである。画家が仕掛けた謎、重ねた筆跡を、あらゆる視線の交差、たどたどしい追跡によって、多重の層や、ひとつの像が結んだり離れたりする、眼の遊びともいえる。絵画は視覚による知的な遊びであり、会話である。私が見つめる風景は、人と風景の時間の長短の彩りが反映されてくる、つまりは、時そのものである。私の風景画は日の人生の短さをユーモアに変換できる、いくつかのヒントになればいいと思う。


津上みゆき 展「それぞれの場所、ひとつの空」
2017年10月22日(日)―12月10日(日)

Gallery

HANASAKAN Café Sweets


Reception


津上みゆき Miyuki Tsugami

1973東京生まれ
1998京都造形大学大学院芸術研究科修了